お知らせ・コラム
やる気スイッチの話
「どうすればやる気が出るのか」というのは誰でも一度は考え、しかし満足のいく解答のない問いと言えます。こういう場合、たいてい間違っているのは答えのほうではなく問いのほうです。
この問いに期待されているのは「○○すればやる気が出る」という答えです。つまり「やる気」をコントロール可能なものとしてとらえているわけです。この考えの極北にあるのが「やる気スイッチ」という言葉でしょう。しかし「やる気」とは、そもそもこのような外部から操作可能なものなのでしょうか?
「自分の心」が一番制御できない
自己啓発の世界では「コントロール可能なものだけに意識を集中しよう。他人を変えるより自分を変えるほうが簡単なのだから、まず自分を変えよう」という考え方をします。この考え方自体はもっともだと思います。
ただ私が思うに、多くの人は、この「自分に近いものほど制御可能だ」という命題を、物理的な距離の意味でとらえて落とし穴にはまっているように思います。つまり「自分の心は自分の中心で半径0センチ、一番コントロール可能な場所だ」という錯覚です。
私はむしろ「自分の心」が一番制御できないと思います。
「やる気」「集中力」「安心」 こういうのはすべて自然現象です。「風が吹く」とか「雨がやむ」とかと同じカテゴリです。
ですから
「勉強するやる気が出ません。どうすればやる気が出ますか?」
と悩むのは、言ってみれば
「雨がふっているので学校に行くのがしんどいです(←分かる)。どうすれば雨はやみますか?(←知らんがな。行け)」と悩むのと同じです。
とにかくテキストをひろげ、ペンをにぎり、視界に文字を入れよう
「コントロール可能なものだけに意識を集中しろ」という自己啓発の考え方を私は全面的に支持します。であればこそ「どうすればやる気が出るか」と悩むのは時間の無駄だと思います。
もちろん、勉強をするのにやる気があって困ることはありません。私自身も数学者になりたくて東大を目指した人間でしたので、数学に関してはやる気まんまんで勉強していました。受験勉強に疲れると「あああっ、もう勉強なんてうんざりだ! よし数学やろう」と言って数学に逃避していました。
私が受験に成功した理由は、単にやる気が出る場所を戦場に選んだらそれがたまたま受験勉強だったというだけです。大事なのは戦場選びです。ちなみに、私は、現代の日本で、人生の戦場を自由に選ぶための最も効果的な手段の一つは勉強をすることだと思っています。
話を戻すと、そんな私が東大に入って驚いたことの一つは、東大生の多くは勉強するのにやる気を必要としない、という点でした。やつらは「さあ勉強するぞ!」みたいな気配がまったくなく、なんというか、息をするように勉強するんですよ。呼吸するのにやる気はいりませんよね。「よーし、今日もいっぱい吸うぞぉ! コホオォォォ!」みたいな人は見たことがありません。
というわけで、やる気は制御不能な自然現象であり、そもそも勉強をするのに特に必要なものでもないのです。じゃあ、やる気が出ないときはどうすればいいのか? 身もふたもないですが「そのままでいいから、やる」というのが結論です。半径0cmはどうしようもなくても、半径85cmならコントロールできます。とにかくテキストをひろげ、ペンをにぎり、視界に文字を入れましょう。
人から与えられた「やる気」は、あとに残るものにはならない
ところで、もし仮に「やる気スイッチ」があったとしても、私はそもそも、それを他人が押してやることがいいことだとは思いません。私の好きな言葉に「卵が内側から割れればヒヨコになるが、外から割ったら目玉焼きができるだけ」というものがあります。人から与えられた「やる気」なんてのは、与えた人が一時的な満足感を得るだけで、あとに残るものにはならないと思います。
とはいえ卵を前にした親鳥は、もちろん何もしないわけではありません。じゃあ何をするかと言うと、温めるわけですね。この「新しい命を誕生させるためには、それを温める必要がある」という事実はとても示唆に富むと思います。
抱卵は卵の温度が2℃低下するだけでも失敗する可能性があるそうです。親という仕事は本当に大変ですね。萌学舎がそんな親御さんたちの助けになれば幸いです。
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