お知らせ・コラム
好きなことで生きていくには (前編)
今回の話題は「好きなことで生きていけ」という考え方についてです。この言葉と、「とりあえず学校の勉強をしろ」という意見は一見正反対に見えますが、本当にそうだろうかということを書きたいと思います。
まず私は、変化が激しい時代こそ「好きなことで生きる」のが重要になると思っています。福澤諭吉を例に説明しましょう。
積み上げたものが全くの無駄になった時
福澤は若い頃に「適塾」という塾でオランダ語を学びました。その勉強ぶりはすさまじく、著書『福翁自伝』にこんなエピソードが出てきます。
適塾に入塾して1年ほどたったある日、福澤は高熱を発し、寝ようと思って枕を探しますが見つかりません。不審に思ってよくよく思いかえしてみると、入塾してからこれまで、そもそも布団で寝たこと自体がなかったことに気づきます。ひたすら勉強し、疲れたらそのまま机につっぷして寝ていたからです。
日本が開国すると、福澤はさっそく横浜に行き、自分のオランダ語を外国人相手に試しますが、一向に通じません。当時の世界は大英帝国が覇権をとっており共通語は英語だったのです。これに衝撃を受けた福澤は、今度は英語の猛勉強を始めるのです!
時代が変わり、自分が積み上げてきたものがまったくの無駄になったのに、そこからすぐに立ち上がる。若き福澤諭吉を支えたのは、世界の人々と意思を通じあいたいという語学への情熱だったように思います。

たいていの人間の好きなことはろくでもないことである
現代もまた激動の時代です。今後、日本は経済的に衰退し、人工知能が人間の職を奪います。収入や地位など外形的な理由だけで生き方を選んでも、それが市場価値を保ち続ける保証はありません。
しかし、好きかどうかは自分が決めることです。だから、自分が心の底から情熱を傾けられることで生きていく。それが人生を強靱にするのです。
ということで、私も日々生徒たちに「好きなことで生きていけるようになれ」と口すっぱく語っています。しかし、ご存知のように、ここに一つ大きな問題があります。それは、たいていの人間の好きなことはろくでもないことであるという問題です。
子供たちに「好きなことは何?」とアンケートをとったら、多数決1位は「睡眠」とかじゃないでしょうか。もちろん私も寝るのは大好きです。愛してます。しかし「睡眠で生きていく」のは難しそうです。「今から8時間寝るんで、お給料よろしく!」「オッケー!」みたいな奇特な会社があったら私にもぜひ紹介してください。超寝ますよ。
仕事として成立する範囲に限定して「好きなこと」を聞いたら、多くの子供は「ない」と答えるのではないでしょうか。さて、どうしましょう。
私がおすすめする戦略は「選択肢をひろげる」ことです。
まず自分が「できること」を増やそう
突然ですがオセロの問題です。
黒番で、AとBのどちらが良い手でしょうか? オセロを少し勉強した人には簡単ですね。

正解はBです。Bだと黒の完封勝ち。Aだと大逆転で白が大勝します。
オセロの目標は石を多く取ることです。なのに8個も石を取れるAは大悪手なのです。その理由は自分の打てる手の数を減らしてしまうからです。
このように、多くのゲームでは序盤・中盤のうちは勝利条件を追求するより選択肢を増やすほうがいいのです。
若いときに少ない選択肢から「好きなこと」を選んでもろくなものがないのが普通です。そんなときは、まず自分が「できること」を増やしましょう。そうして、心のセンサーに反応するものを探すのです。
そして現代の日本で、人生の選択肢を増やすための最も整備された道はなんでしょうか?
私は「とりあえず学校の勉強をすること」だと思います。
その意味で「好きなことで生きていけ」と「とりあえず学校の勉強をしろ」は対立するどころか、
むしろ同じ方向をむいたアドバイスなのではないでしょうか。
今回はここまでです。
次回は「好きなことで生きていけ」という考え方にある、もう一つの致命的な問題について話したいと思います。
入塾をご検討の方へ
二週間の無料体験授業をしていただけます
萌学舎の生徒のほとんどは無料体験授業で該当するクラスの授業に参加してから、入塾を決定しています。商品を購入するのに、その中身がわからないまま買う人はいません。ぜひ、実際に授業を受け、納得なさってからお入り下さい。