好きなことで生きていくには (後編) | 朝霞・志木・新座エリアの小学生・中学生向け学習塾【萌学舎】
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好きなことで生きていくには (後編)

2025/02/19
萌学舎通信
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萌学舎 塾長 角 一路

前回に続き「好きなことをして生きていく」ことについて書いていきます。

前回書いたのは、

  • これから価値観が激変する時代が来ること。
  • そういう時代には他人に左右されない「自分が好きかどうか」が大事になること。
  • 好きなことを見つけるには選択肢(せんたくし)を広げることが大切なこと。
  • 学校の勉強はその有力な手段であること

でした。

ただ私は、この「好きなことをして生きていく」という戦略には一つ重大な問題点があると考えています。それは、人間は自分が何が好きか分からないという問題です。

例として「野球が好き」な子どもを考えましょう。
試合になると見るからにいきいきし、休日はいつも友人と野球の練習。勉強は大嫌いです。
誰がどう見てもこの子は「野球が好き」です。

では、この子はプロ野球の選手を目指すのが正しいのでしょうか。

ここで、この子が本当に好きなのは実は野球ではなく「友だちと力を合わせて一つの目標にむかってがんばること」だったとしたらどうでしょうか。

プロを目指す高校生は1日1000スイングとかするわけですが、じゃあ、この子が一人でもくもくとバットを振って幸せになるのか?
むしろ、大企業で仲間と大きなプロジェクトを成功させるとか、そういう人生のほうが向いているかもしれません。

つまり「○○が好き」というとき、本人がその○○を通じて「何を体験しているか」が問題なのです。これは本人でさえよく分かっていないのではないでしょうか。

 (たわら)()()の歌に「君と()む三百円のあなごずし そのおいしさを恋とこそ知れ」があります。ちなみに、私の好きな短歌ランキング55位(約200首中)の歌です。

 「三百円のあなごずし」というのはスーパーの安いパック寿司(ずし)です。でもなぜか今日はそれがおいしい。どうしてだろうって思って、そこで初めて作者は自分の気持ちに気づきます。ああそうか、私はこの人が好きなんだ。人を好きになるってこういうことなんだ。「こそ知れ」は「係り結び」で、命令ではなく強調表現です。

人間は自分が好きなものの正体が簡単に分からないのです。
これは「好きなことをして生きていく」という人生戦略においては致命的(ちめいてき)な問題です。

さて、どうしましょう。

私はスティーブ・ジョブズの有名なエピソードにそのヒントがあると思います。

ジョブズはせっかく入学した大学を半年で中退しますが、その後も大学に残って興味のある授業に「もぐり」で顔を出す生活を続けます。その授業の一つがカリグラフィー(西洋書道)でした。ジョブズは書字のもつ美しさに魅了(みりょう)されますが、その勉強はその時点ではなんの実用性ももっていませんでした。

しかし、この授業はのちにアップルを起業したときに(い)かされます。マックコンピュータの美しい画面デザインに、カリグラフィーで(つちか)った感性が活かされたのです。

ジョブズはこの体験を“Connecting the dots”(点がつながった)と表現しました。
そして、ジョブズは、点をつなぐことは未来に向かって行うことはできず、過去をふり返ってつなぐしかないと指摘します。

 私も同じように思います。自分が好きなものは何かを知るためには、好きだと感じることをいっぱい経験し、あとでふり返ってその共通点を探すしかないのです。

ニュートンは自分を「砂浜で貝殻(かいがら)を拾っている子ども」にたとえました。目の前の貝を夢中で追いかけて、ふと後ろをふり返ると、遠まわりしていたはずの自分の足跡が一本の道になっている。

「好きなこと」を見つけるというのはそういうことです。

ですから「自分は何が好きか」は、むしろ大人になってからでないと分からないのです。逆に子どものうちは、自分の好きなものはこうだと決めつけず、とにかくいろいろなことをしたほうがいいと思います。

点を未来にむかってつなぐことはできません。本は手当たりしだいに乱読したほうがいいし、出されたご飯は味わって全部食べましょう。
そしてやりたいことがようやく見つかったときに、その好きなことで生きていくことができるように、今は人生の選択肢を広げましょう

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萌学舎 塾長 角 一路

東京大学理学部卒。若い頃は数学者になりたくて大学も数学科に進学。そのまま大学院にも進みましたが、在学中にアルバイトでやっていた塾教師の面白さに目覚めてしまい、萌学舎に就職しました。今では私の人生の半分は「萌学舎の先生」です。担当科目は国語・英語・理科・数学。高校・大学で演劇をやっていた経験をいかした迫力ある授業と、数学科じこみのロジカルな解説がもち味です。

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