お知らせ・コラム
バイオスフィア2 ― 風の力 ―
新学年です。今回は「バイオスフィア2」という有名な実験施設の話から「成長に必要なもの」についてお話ししたいと思います。
バイオスフィア2
「バイオスフィア2」は1991年にアメリカのアリゾナ州に建設された巨大な実験施設です。東京ドームの4分の1ほどの大きさをもつガラス張りの密閉空間で、外部からの物質の出入りがほぼゼロになるように設計されました。
施設内には、熱帯雨林、サンゴ礁つきの海、マングローブの湿地、サバンナ、砂漠が用意されました。3頭のブタ、5頭のヤギ、38羽のニワトリなど、約3,800種類の動植物、そして8人の男女の研究員が中に入り、閉鎖空間内での生活を開始しました。
「バイオスフィア」とは「生物圏」という意味です。地球に続く「第二のバイオスフィア」を作ろうというのがこの実験の目的でした。現在の地球環境を理解するためだけでなく、将来人類が宇宙に移民するときの準備になるという期待もありました。
100年間運用する構想もあったバイオスフィア2の最初の実験は、2年で終了しました。
生態系の崩壊
バイオスフィア2の生態系は研究者たちが想像もしなかった形で次々と崩壊しました。
例えば、施設のガラス窓が紫外線を遮断していたことがミツバチに大ダメージを与えました。ミツバチは人間と違い紫外線を使ってものを見ていたのです。花粉を運ぶミツバチの絶滅は、さらに多くの植物の絶滅につながりました。
致命的だったのは酸素濃度が21%から14%に低下してしまったことです。当初は原因不明でしたが、のちに施設内のコンクリートにCO2の形で吸着していたと判明しました。
ちなみに、こんな状況の中でも元気に大発生していた生物がいます。ゴキブリです。うん、知ってた。ほんとG先生は期待を裏切らないですね。
この地獄のような状況の中で、8人の研究員は必死に生活を続けました。小麦が十分育たず、食べさせる飼料がなくなったため、ブタは早々に屠殺されました。頼りになったのはサツマイモです。彼らは毎日大量のサツマイモを食べ続け、ベータカロテンの過剰摂取により肌がオレンジ色になりました。
2年間の実験を終え、久しぶりに外界に出た研究員の「(出た直後は)香水やヘアスプレーの臭いがくさくて耐えられなかった」という言葉が、個人的に妙に印象に残っています。
木の異常な成長
ところでみなさん、バイオスフィア2内の木はどんな成長をしたと思いますか?
答えは、「めちゃくちゃよく成長した」です。自然条件のなんと4倍近い速度で成長した樹種もあったそうです。
理由は複数あるのですが、最も興味深い理由は「施設内に風が吹かなかったから」というものです。自然界の木は風に吹かれることで「反応木(ストレスウッド)」と呼ばれる組織を作り出し、幹をより強く、根をより深く張ります。バイオスフィア2の木はその必要がなく、すべてのエネルギーを上に伸びることに使えたのです。
しかし、風にゆらされず、すくすくと成長した木々は、ある程度の高さに達すると自重に耐えられず次々に折れていきました。
「ストレス」の意味
この話はよく引用され「適度なストレスは成長のために不可欠だ」という教訓とされます。私も同感です。
しかし、ここで注意すべきなのは、英語のストレス(stress)と日本語のストレスは微妙に意味が違うことです。
一つ例を挙げますと、英単語には「強く発音する場所」がありますよね。日本では「アクセント」と呼びますが、英語ではそれを「ストレス」と言います。ちなみに英語で個人の言葉づかいに関して「アクセント」といったら「方言・なまり」のことです。
つまり「ストレス」というのは「力をかけること・強調するところ」という意味であって、必ずしも「つらいこと」を意味しません。
そもそも、風でゆれるのは楽しいじゃないですか!

人には「ゆれ」が必要だ
バイオスフィア2の木が教えてくれることは、生き物の成長には「ゆれ」が必要だ、ということだと思います。
動物園で毎日決まった時間にご飯を出すと、動物たちは活力を失い、病気にかかりやすくなるそうです。ですから現代の動物園では、わざとエサを隠したり、食事の時間を不規則にしたりします。
萌学舎も今年、新しい先生を2人迎えます。生徒にとってできるだけいい環境をつくるために、我々も常に変化しつつ、そのゆらぎを楽しみ、生徒とともに成長していきたいと思います。
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